『ブエノスアイレス』

9/20 ヒューマントラストシネマ有楽町で『ブエノスアイレス』(1997年)

映画の舞台は1995年。香港から南米アルゼンチンへやって来たウィン(レスリー・チャン)とファイ(トニー・レオン)。何度も喧嘩別れをしてはヨリを戻すことを繰り返してきた2人は今回の“やり直し”の旅の目的地にアルゼンチンを選び、観光名所「イグアスの滝」を目指して車を走らせるが、些細なことからまた痴話喧嘩をして別れ別れに。その後しばらくしてアルゼンチンの首都・ブエノスアイレスで2人は再会。怪我をしたウィンをファイが看病しながら一緒に暮らすことになるが…。 

ウォン・カーウァイ監督の過去作から5作品を4Kレストアするという企画。ならば4K上映する映画館で観るべきなのだろうけれども、仕事の帰り道で行きやすい有楽町(2K上映)で『ブエノスアイレス』を観てきた。男同士の恋人たちの話だけど、傷つく事が分かっていても相手を愛する気持ちを抑えられない、どうしようもなく相手に惹かれてしまうという感情は、相手が同性とか異性とか全く関係なく、恋愛において誰もが共感し頷けるものだと思う。心情を説明する台詞を排して、愛し合うことの喜びも、嫉妬や独占欲に駆られる苦しさも、想いがすれ違っていく切なさも、2人の表情や佇まいがリアルに伝えてくる。レスリー・チャントニー・レオンも演技が巧みだし、自由奔放で小悪魔的なツンデレでファイを振り回すウィンも、ウィンの言動に腹を立てながらも彼が愛しくてつい世話を焼いてしまうファイも、とにかくすごく魅力的だ。なぜか私はこの映画の2人は20代だとずっと思い込んでいて、映画公開時(1997年)にレスリー・チャンは41歳、トニー・レオンは35歳だったと今回あらためて気づいたのだけど、それなりに年齢を重ねた2人の物語だったのだと思うと、互いに愛していながらも結局は一緒に居ることができなかった2人に対する哀しみがいや増した。

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