秀山祭九月大歌舞伎 第三部『仮名手本忠臣蔵 ―祇園一力茶屋の場― 』

9/14 歌舞伎座で『仮名手本忠臣蔵祇園一力茶屋の場― 』

二世吉右衛門一周忌追善と謳った秀山祭。故人に所縁の演目を揃えた今月、第一部も観たかったのだけど時間が合いそうになく、仁左衛門さんが由良之助を演じる第三部『仮名手本忠臣蔵』を観てきた。茶屋遊びにうつつを抜かしている様が洒脱で色気に溢れる前半、本心を隠してきた苦渋と仇討への決意を朗々と力強く語る後半、仁左衛門さんの魅力は観客を舞台に釘付けにする。吉右衛門さんの重厚でお腹にずしりとくる由良之助ももちろん良かったけれど、演じる役者によってまた違う楽しみ方ができるのが歌舞伎の面白さだ。中村吉右衛門という本当に大きな柱を失った歌舞伎界で、仁左衛門さんにはどうぞお身体大切にご活躍いただきたいと思う。そして今回久しぶりに一力茶屋を観て、これは大星由良之助の話だけれども実は平右衛門とおかる兄妹の話でもあるということにあらためて気が付いた。この兄妹のやり取りを面白いと思って観たことが今までなかった。海老蔵さんの平右衛門はやたら語尾が上がるのが耳障りで、これはどうなるのかと思ったけれども、雀右衛門さんのおかるがとても巧くリードして2人の会話を進めていて、この兄妹の物語に集中していく中で台詞の癖は気にならなくなっていた。平右衛門の実直で一途な感じを海老蔵さんはとても丁寧に演じていたので、変な癖が出なかったらもっと良かったのにと思う。

youtu.be