『Summer of 85』

9/1 ヒューマントラストシネマ有楽町で『Summer of 85』

f:id:izmysn:20210903105405p:plain

フランソワ・オゾン監督が1985年の夏を背景に描くラブストーリー。16歳のアレックスは偶然出会った18歳のダヴィドに強く惹かれ、急速に親しくなった2人は友情を超えて恋愛感情で結ばれるようになる。アレックスにとってこれが初めての恋で、ダヴィドと過ごす日々の喜びに満ちた表情、一瞬も離れていたくない、彼の事しか考えられないという切ない想いを、フェリックス・ルフェーヴルが感情豊かに演じていてとても良い。一途にダヴィドを慕い続けるアレックスに対して、ダヴィドにはアレックスを愛しながらも他の男性とも女性とも関係を持つ自由奔放さと危うさがあり、嫉妬と不信感に苦しめられるアレックスは、バイクの事故で突然ダヴィドを失ったことで絶望の底に突き落とされる。映画の後半はアレックスが苦しみながらもダヴィドの死から少しずつ立ち直り、また友人ケイトの「あなたが愛したのはダヴィドの幻影では?本当の彼を見ていなかったでは?」という言葉から、彼との関係、他者を愛するということを見つめ直して、自分のあらたな人生を歩み始める様子を描いている。愛する人の死という悲劇を含みながら鑑賞後には爽やかな印象が残った。ひと夏の同性同士の恋ということで「君の名前で僕を呼んで」の二番煎じとか言われてもいるようだけど、恋をした相手の存在が世界のすべてになる、そんな生まれて初めての経験に身を焦がすアレックスの姿には懐かしい共感と真実味が感じられて、私はこの『Summer of 85』の方が断然好きだ。

youtu.be