劇団チョコレートケーキ『ガマ』

8/31 東京芸術劇場シアターイーストで劇団チョコレートケーキ『ガマ』 脚本:古川健 演出:日澤雄介

世界と環境が目まぐるしく変化するなか
私たちの国をもう一度見つめなおすために
これまでの作品を連作で振り返ることとしました。
私たちの今の立ち位置を確認するために。
そして、これからの時代と繋がっていくために。

生き残った子孫たちへ 戦争六篇。

今回上演の戦争六篇のうち「その頬、熱線に焼かれ」「無畏」「帰還不能点」は以前に観ていたので、新作の『ガマ』を選んで観てきた。今作で描かれるのは太平洋戦争最大の地上戦、沖縄戦。ガマと呼ばれる避難壕として使われていた洞窟の中で、日本軍の逃亡兵や怪我人、ひめゆり乙女達が、自分達は生きるべきなのか死ぬべきなのかという葛藤を繰り広げる。真っ暗なガマの中で光源はランプだけ、岩に掘られた洞窟なので凹凸が激しく平らなところがないという状況を確かに伝える照明と舞台美術の仕事が目を引く。沖縄を本土の前線と位置付けて、本土決戦の前にここで米軍に大打撃を与えるという作戦は、沖縄に暮らす多くの人々の命を奪う結果となった。日本軍は沖縄を捨て石にしたという言葉が劇中に何度も出てくるけれど、本土出身の軍人3人、沖縄の民間人3人、ガマに偶然集まったこの6人がそれぞれの立場から語る言葉が壮絶な沖縄戦の悲惨、沖縄が押し付けられたあまりにも大きな負担、愛国教育という刷り込みによって歪められた人々の生活を浮き彫りにする。そしてそんな最低最悪の状況の中でも人が人を思いやり互いに助け合う姿が描かれ、命を無駄にしてはいけないということ、生きていくことの大切さが静かにひたひたと胸に迫る結末。今回もまた深く考えさせられる舞台だった。

劇団チョコレートケーキ『生き残った子孫たちへ 戦争六篇』古川健インタビュー | 演劇最強論-ing