ヒトハダ『僕は歌う、青空とコーラと君のために』

4/21 浅草九劇で『僕は歌う、青空とコーラと君のために』 作・演出:鄭義信

ヒトハダの旗揚げ公演、初日を観てきた。戦後のアメリカ軍占領下で、男性コーラスグループとして基地周りをしているメンバーたちの物語が、歌や踊りと共に描かれる。音楽劇といってもいいほど歌の比重が高く、浅野雅博がとても歌が上手だったり、尾上寛之はすごく動けて踊れる人であることが分かったり、という驚きがあった。コーラスメンバーのうち二人は韓国人、一人は日系アメリカ人、一人はトランスジェンダーで、メンバーの面倒を見ているクラブのママも韓国人という設定だ。鄭脚本らしく、韓国と日本、アメリカと日本というそれぞれの国の間で、戦争の悲惨に翻弄された人間の哀しみが切々と語られるのだけど、自身の辛い経験を話す俳優陣がもうなんか号泣していて、私は舞台上で俳優に大泣きされるのが苦手なので好みの問題になるけれど、あそこまで泣かれるとちょっとこちらは引くレベルで、いやまいったなあと思ってしまった。あと「Danny Boy」とか「Over the Rainbow」とか歌の使い方もけっこうベタという気はした。もう二度と戦争の時代はごめんだという想いは確かな熱量を持って伝わってくるし、音楽には国境がないというけれど、歌や踊りを通して、たとえ生まれた国が違っても人は心を許し合い理解し合えるということがまっすぐに描かれた作品だと思う。そして劇団としての旗揚げ公演ということで、あて書きの部分もあるだろうけれど、俳優陣はみんなとても生き生きと役を演じていて、このメンバーで劇をするのが嬉しくて仕方ないという感じがすごく伝わってきた。櫻井章喜は女性の心を持った男性をとても楽しそうに演じていて、シリアスになり過ぎそうなところでツッコミを入れる間合いが上手だなと思った。