METライブビューイング『ハムレット』

7/20  東劇でMETライブビューイング『ハムレット

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これまで私はオペラのキャスト=「歌手」という認識でいたのだけど、この作品を観て思ったのは、彼らは台詞を語る代わりに歌で伝えている「俳優」なのだということだった。素人の耳にも非常に難しい曲が多くて、見事に歌いこなす技術の高さはもちろん、それに加えてキャストたちは大きな動きや豊かな表情を伴う確かな演技でシェイクスピアの世界を表現している。今作もまた“オペラ作品とはこういうものだ”という私の思い込みを大きく超えるものだった。休憩をはさんだ2幕構成でそれぞれの幕は約100分なので、原作の戯曲からカットした場や台詞は結構あり、物語はスピーディーにテンポよく展開する。2幕めはオフィーリアの狂乱から始まるのだけど、泥だらけの燕尾服の下にはブラとショーツだけという大胆な衣装に驚いた。父王の亡霊も上半身裸で出てくるし、全体に陰鬱で重たいムードの中でところどころに差し込まれるエロティックな演出が効いていて、とても見応えのある作品だった。2021-2022シーズンのラインナップは2作しか観られなかったので、9月のアンコール上映でできるだけ追いかけたい。