『夜を走る』

7/26 UPLINK吉祥寺で『夜を走る』

郊外のスクラップ工場で働くふたりの男。

ひとりは40 歳を過ぎて独身、不器用な性格が災いして嫌味な上司から目の敵にされている秋本(足立智充)。

ひとりは妻子との暮らしに飽き足らず、気ままに楽しみながら要領よく世の中を渡ってきた谷口(玉置玲央)。

退屈な、それでいて平穏な毎日を過ごしてきたふたり。しかし、ある夜の出来事をきっかけに、彼らの運命は大きく揺らぎ始める……。

倦怠感と諦念の中でただ過ぎていく生ぬるい日常に、どうしようもなく醜悪で自分勝手な人間の姿が浮かび上がってくる。この映画の登場人物たちの「悪」にはきっと誰もが思い当たるに違いないリアルさがあり、気付かないフリをしてきた自分の中の腐った部分を拡大して見せつけられているようだ。そのリアルはまた暴力やハラスメントを生み出し続ける社会の問題も照射する。どうしようもなく壊れた世界に蠢くどうしようもなく壊れた人たち。登場人物の言葉の端から何が起こったのかを想像しながら、どこに連れていかれるのか全く読めない怒涛の展開に引き込まれ圧倒された。監督・脚本の佐向大の映画を私は今作で初めて観たけど非常に面白かった。主演の2人を演じた足立智充も玉置玲央もすばらしく、特に2人とも目の表情がとても良いと思う。その筋のひと役の松重豊が醸し出す底知れないヒトデナシ感も、宇野祥平が演じた怪しい教祖の吐き気を誘ううさん臭さも見事だった。

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