『反応工程』

7/14 新国立劇場小劇場で『反応工程』 作:宮本研 演出:千葉哲也

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新国立劇場のフルオーディション企画第2弾。昨年4月に上演予定だったものがコロナ禍で公演中止になり、1年以上を経て今回あらためての上演だ。1945年8月の軍需指定工場を舞台に動員学徒の若者たちの姿を描いた作品で、宮本研の実体験に基づいて書かれたものだという。幕が上がって作業場の黒板に書かれた日付は8月5日。明日広島に、そして9日には長崎に原爆が投下されること、10日後に戦争が終わることを観客は知っているけれども、劇中に生きる若者たちは日本の勝利を固く信じている。そんな中で仲間の一人に届いた赤紙、召集命令からの逃亡、禁書を持っていた事で受ける糾弾、戦況について大人たちの言葉に感じる嘘など、戦争が日常という時代の真っただ中にいるがための若者たちの言動は、そこでしか見えなかった景色を通すことで戦争の愚かしさ恐ろしさを照射していると感じた。若者たちはもちろん工場ではたらく古参の職工たちも、戦争の時代に翻弄された人々だ。物語の終盤で掲げられるプラカードに書かれた、戦争は二度とごめんだ、ひとが死ぬ、という言葉。客席の年齢層は高かったけれど、10代や20代のひとたちにも観てほしい作品だと思った。若いキャストたちが各々の役に精一杯ぶつかる好演で、ベテラン勢の安定感もとても良かった。