前進座『杜若艶色紫 お六と願哲』

5/19 国立劇場大劇場で前進座杜若艶色紫 お六と願哲』 作:鶴屋南北

鶴屋南北のこの演目はこれまで観たことがなく、前進座では41年ぶりの上演との事。松竹では20年ほど前に福助さんが演じているらしい。遊女八ツ橋と悪婆お六という対照的な役をひとりの女形が演じ分けるのが見どころとなる舞台で、二役早替わりの趣向もある。全体にわかりやすくまとまっているのだけど、歌舞伎になっている人と全くなっていない人の差がこれまで以上に非常に気になり、変な抑揚をつけた台詞回しとか、なぜそこで正面を切るのか意味がわからない動きとか、観ていてイライラしてしまった。現代口語の台詞も含む木ノ下歌舞伎で、歌舞伎役者ではない俳優が歌舞伎演目を新解釈で演じる舞台を観る時には私もそんな風には思わない。けれども歌舞伎を継承する劇団だと公言して歌舞伎の演目を上演するならば台詞や所作がなっていないと観客に感じさせてはだめだと思う。とても残念に思った。