『ロビー・ヒーロー』

5/18 新国立劇場小劇場で『ロビー・ヒーロー』 作:ケネス・ロナーガン 翻訳:浦辺千鶴 演出:桑原裕子

マンハッタンにある高層マンションの広いロビー。

警備担当のジェフは、人生の目的もなくこの仕事についている。クソ真面目で向上心のある上司ウィリアムは、不良の弟が殺人罪に問われて心配していた。

見回りに来た有能な警察官ビルと相棒の新人見習いのドーン、どうも二人はいい仲のようだ。

ロビーで待っているドーンに、ビルの訪問先は女性だと口を滑らしてしまうジェフ。動揺したドーンは、勤務時間中の行動を上に報告するとビルに噛みつくが、本採用させないぞと逆に圧をかけられてしまう。

翌日。弟のアリバイを偽証したウィリアムに対して、自分が何をすべきか悩むジェフ。ドーンは本当のことを話すのがあなたの責任だと説得するが...。

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新国立劇場の新シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話…の物語」の第二弾。マンションのロビーで交わされる登場人物4人による会話を通して、人種や性別、職種や役職による差別意識やハラスメントが浮かび上がり、自分が正しいと思う選択をしようとするそれぞれの正義は対立し確執を生む。今年の「声」シリーズの戯曲は3作とも芸術監督の小川絵梨子が選んだものだそうで、前回の「アンチポデス」も面白かったけれど、今作も非常に見応えのある作品だった。盆を使った舞台も効果的で、ロビーと外の街路で展開する物語を互いに透かして見える作りにすることで、立場が違えば受け止め方も違うのだということ、物事は違う角度から見ると様相が全く変わってくるのだということを伝える装置になっている。俳優陣も好演で、会話から醸し出される軽やかなユーモアと同時に、そこに含まれるシリアスな問題もしっかり観客に届ける仕事をしていたと思う。来月のシリーズ3作目「貴婦人の来訪」もとても楽しみになった。