NTLive『スカイライト』

8/13 シネ・リーブル池袋でナショナル・シアター・ライブ『スカイライト』 作:デヴィッド・ヘアー 演出:スティーヴン・ダルドリー

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恒例のNTLiveアンコール夏祭りから未見だった『スカイライト』を観てきた。1995年初演、2015年にトニー賞リバイバル作品賞を受賞、今回は2016年の舞台のアンコール上映だ。2018年に小川絵梨子が演出した新国立劇場公演時の蒼井優の演技が本当にすばらしく心に残る作品だったので、英国版を観るのが楽しみだった。かつて不倫の関係にあったキーラ(キャリー・マリガン)とトム(ビル・ナイ)。3年ぶりに再会、というかトムが夜中にいきなりキーラの部屋を訪ねてきたのだけれど、2人がこれまでの事を語り合う言葉の端々から、今でも消えない相手への想いと同時にくすぶる不信感が見え隠れし、会話はいつしかお互いの価値観の決定的な違いを浮かび上がらせていく。非常にスリリングで目が離せない会話劇。若いかつての不倫相手に対する未練、そこには多分に性的な執着があるであろう中年男性の小狡さをビル・ナイが見事に伝えてくれるのだけど、如何せん60歳を超えた実年齢は見た目にキーラとの差があり過ぎて、30歳設定のキーラを抱きしめても肉体関係があった2人のようには見えないし、父と娘のように感じてしまうのは問題だと思った。トムの庇護下から飛び出し、今は教師として働きながら自分の生き方を模索するキーラを等身大のひとりの女性として演じたキャリー・マリガンは、これは「プロミシング・ヤング・ウーマン」以前の彼女のイメージに割かし近い役柄だと思うけれど、観客の共感をしっかりと引き出して味方につける好演だった。あとこの舞台は美術がよく考えられていて、背景に低所得者用の団地と分かる建物の窓々が並んでいるのだけど、キーラがどんな街に暮らしてどういう経済状態なのかが観客に一目で伝わるのがとても良いと思った。

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