『青空は後悔の証し』

5/17 シアタートラムで『青空は後悔の証し』 作・演出:岩松了

パイロットを退職したロウ(風間杜夫)は以前は息子のミキオ(豊原功補)とその妻ソノコ(石田ひかり)と同居していたが三年前に別居し、今は家政婦の玉田(佐藤直子)がロウに仕えている。
ロウはパイロット時代の部下で今は郊外で小さなレストランを営んでいる元客室乗務員の野々村という女性との久々の再会を楽しみにしていた。
当時ロウは妻子持ちとの恋愛に悩んでいた野々村に救いの手を差し伸べたことがあり、それはロウにとってはいわば善行の思い出だった。
ところがその再会を前にしたある日、野々村のレストランで働いてるという若い女小野花梨)が訪ねてきて…。

 

今回の岩松作品もやはり一筋縄ではいかない舞台だった。ベースはお互いに愛情がありながらもうまくいかない父親と息子の話と言っていいと思う。けれども例えばロウは野々村は自分に感謝しているに違いないと信じているけれど、当時のロウの行為は実は余計なおせっかいで彼女にとっては鬱陶しいものだったのかもしれず、独りよがりの善意がもたらす弊害といったことが匂わされたり、例えばミキオは言葉で気持ちが伝わるということに懐疑的で、父親にも妻にも捻くれた言動をしてしまう理由が何か過去にあったのだろうかと思わされたり。今作でもそこに明確な答えは示されず、交わされる会話の端々から想像するしかないのだけれど、その会話がまた台本でいうなら数行前あるいは数頁前にしていた内容にいきなり繋がり唐突に揺り戻されるような感じで、今の「違うんだ」は、今の「そうよ」は、いつの何に対する答えだ?と頭をフル回転させることになる。親子や夫婦であっても他者には違いなく、相手が本当は何を考え何を感じているのか、解ったつもりでいることも解っていてくれると思うことも、そこに漂うのはどこかしら滑稽な哀しみだ。家政婦の玉田さんという第三者の視線が、家族という関係の中でそれぞれが抱えている孤独をより鮮明に観客に伝えているように思った。