『ハウス・オブ・グッチ』

1/18 TOHOシネマズ日本橋で『ハウス・オブ・グッチ』

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グッチ家の誰かが殺されたという話は昔たしかに聞いた覚えがあるのだけれど詳しい事は知らなくて、これはその事件に基づいてグッチ家のお家騒動を描いた映画。グッチ家の御曹司マウリツィオ(アダム・ドライバー)は貧しい家庭出身ながら魅力的なパトリツィア(レディー・ガガ)の積極的なモーション攻撃を受けて恋に落ち、やがて二人は結婚する。野心家のパトリツィアは家業に興味のないマウリツィオのお尻を叩き、邪魔な伯父一家を蹴落としてグッチの経営権を握るよう操っていく。前半は気の優しい亭主と気丈な妻という「マクベス」を思わせるような展開。後半はマウリツィオの愛を失ったパトリツィアが夫殺しを計画し実行する経緯を追っていく。物語自体は淡々と進んでいまひとつ盛り上がりに欠ける演出なのだけど、この映画はとにかくレディー・ガガの演技が見ものだ。この映画のパトリツィアはとても賢い女性でユーモアのセンスもあり、財産目当てではなく本当にマウリツィオを愛して結婚した女性として描かれているのだけど、グッチ家の男性中心主義や生まれに対する蔑視に対して正面から立ち向かおうとする強さがある。馬鹿にしてくる相手を見返してやりたいという気持ちがお家乗っ取りの動機であり、夫殺害も見下されたことへの報復なのだと思う。そんなパトリツィアの幸福に満ちた輝くような美貌が追い詰められて転落していく中でふてぶてしく醜くなっていく様をレディー・ガガが見事に演じていた。アダム・ドライバーは今作もとてもチャーミングで、内気なおとなしい青年時代も傲慢な経営者になってからの顔も説得力があって巧いと思った。ジェレミー・アイアンズ(ロドルフォ・グッチ役)はちょっと出てすぐ死んでしまうのだけど、そのインテリ感というかセンスの良さを全身から感じさせる佇まいで、高価なスーツを着ていてもどこかしら下世話な雰囲気を醸し出すアル・パチーノ(アルド・グッチ役)と好対照だ。この兄弟の相違を着こなしからも伝えてくる見せ方が良いと思った。

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