『マシュー・ボーン IN CINEMA/赤い靴』

8/14 UPLINK吉祥寺で『マシュー・ボーン IN CINEMA/赤い靴』

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マシュー・ボーン作品の映画版は「白鳥の湖」「ロミオとジュリエット」に続いてこれが3作めだ。元になった1948年制作の映画は観ていなくてアンデルセンの童話も読んでなくて、赤い靴を履いたバレリーナが死ぬまで踊り続けることになる話、みたいな認識しかないまま今作を観た。「この作品のメインテーマは愛vs芸術、そしてキャリアvs愛」とマシュー・ボーンがインタビューで語るとおり、若く才能あふれるプリマドンナのヴィクトリアが、愛かダンサーとしての成功かという選択に苦悩する姿が描かれる。ヴィクトリアは作曲家で指揮者であるジュリアンと恋に落ちるのだけど、バレエ団のプロデューサーであるレルモントフは、真に偉大な芸術家に恋愛は不要として2人に別れを迫る。マシュー・ボーンの作品はコンテンポラリーダンサーも多く出演するのだけど、彼らの鍛えられた太腿とか筋肉とかバレエダンサーとはまた違った生々しい身体を通して、本作の中で悩み葛藤する登場人物たちの思いがリアルに伝わってくるように感じた。レルモントフを演じるのはアダム・クーパーで、これぞカリスマという圧倒的な存在感。ダンスシーンはもちろん表情の演技もすばらしかった。ヴィクトリアの死で終わるこの悲しい物語の中で、バレエ団が巡業していく旅先の様子を表わすダンスは、コミカルな振り付けの群舞がとても楽しくて、観客が一息つける場面になっていた。