モダンスイマーズ『だからビリーは東京で』

1/12 東京芸術劇場シアターイーストで、モダンスイマーズ『だからビリーは東京で』 作・演出:蓬莱竜太

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モダンスイマーズの作品は句読点三部作から観ていて、前回の「ビューティフルワールド」もすごく良かったし、今作もとても楽しみにしていた。タイトルにある“ビリー”はミュージカル「ビリー・エリオット」のビリーのことで、このミュージカルを観て感動して役者になろうと決心した青年と、彼が応募して所属することになった劇団の物語。主人公の凛太郎はビリーの姿に夢を追う自分を重ね、ビリーと父親の関係と比べて自分たち親子の関係を考える。私はミュージカル版は観たことないのだけど、映画(邦題「リトル・ダンサー」)はすごく好きな作品で、映画で描かれていた内容が舞台上で起こる出来事に重なって思い出されて、映画のようにはいかない凛太郎の抱える切ない想いに胸が詰まる。そして凛太郎を応援したいという気持ちが、いつしか役者も劇団も有名も無名も関係なく、演劇に係わっているすべてのひとたちに心からのエールを送りたい気持ちでいっぱいになる。独りよがりでダメダメな劇団員たちの姿に苦笑しながらも、どうして演劇を続けるのか、それぞれの理由に胸を突かれ、まだ何者でもないたくさんのビリーたちに対する、演劇に対する、やさしさと愛にあふれた舞台だった。モダンのメンバーの安定感、達者な客演の女優さん2人に加えて、凛太郎を演じた名村辰という俳優さんを私は初めて観たけどしなやかさとまっすぐさが伝わってきてとても良かった。