『マクベス』

12/31 ヒューマントラストシネマ有楽町で『マクベス』 原作:ウィリアム・シェイクスピア 監督・脚本:ジョエル・コーエン

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モノクロの映像、無機質でシンプルなセット、必要最低限の小道具など、すべては俳優の演技を際立たせることに貢献し、観客を登場人物に集中させて物語の世界に導く撮り方をしていると思う。構成舞台の演劇を観ているようにも感じた。原作からカットされている部分はあるものの極端な設定の変更や脚色はなく、原作を全く知らなくても分かりやすいスピーディーな展開になっている。デンゼル・ワシントンフランシス・マクドーマンドも間違いなく巧みな俳優だけど、シェイクスピア作品を演じているのは初めて観たのでとても新鮮だったし、マクベス夫妻としての2人のバランスもとても良かったと思う。また3人の魔女をひとりで演じたキャサリン・ハンターがすばらしく、その声とぎくしゃくとした不気味な身体の動きで圧倒的な存在感を放っていた。以前NTLiveで「マクベス」を観た時はあろうことか寝落ちしてしまったのだけど、今回はヒリヒリするような緊張感の中、権力に対する野心、裏切り、恐怖、復讐に翻弄される人間の姿が繊細に濃密に描き出される悲劇を息をつめて堪能した。