リーディング公演『ローマ帝国の三島由紀夫』

12/30 シアター風姿花伝で『ローマ帝国三島由紀夫』 作:古川日出男 演出:木村龍之介

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2018年「新潮」に掲載された戯曲は読んでいなくて、冒頭の部分だけ新潮社のサイトで立ち読みできたのでそこだけ目を通して公演に臨んだ。舞台上にはパイプ椅子が並べられ俳優たちはテキストを手に持っているけれど、いかにもリーディング公演というのは最初だけで、パイプ椅子はローマの地底に落ちた自動車になり、俳優たちは所狭しと動き回り全身を使って役を演じる。場面によっては手元のテキストに全く目を向けることもない。2年後の本公演を目指していると当日パンフに演出家が書いていたけれど、今回の公演で試したものから進みたい方向が割とはっきり観客に示されていたように思う。ト書きの部分を群読の形にして俳優たちの声が重なったりリフレインしたりする演出は面白い。二幕目でオスカー・ワイルドの「サロメ」をそのままなぞる場面は少々長いと感じたけれども、総じてとてもスリリングで引き込まれる3時間だった。ただ一点、台詞のきっかけを忘れたり相手の台詞を食ったりが目立つ俳優が一人いて、劇の途中で成河がすっとその人のそばに行って何か囁いたのだけど、もちろん声は聞こえなかったけど激励かダメ出しか、とにかく戯曲にない動きであることは間違いなく、芝居の途中で演じている役を離れた姿を見せられたことがとても気になった。