NTLive『十二夜』

10/13  シネ・リーブル池袋でナショナル・シアター・ライブ『十二夜』 原作:ウィリアム・シェイクスピア 演出:サイモン・ゴドウィン、ロビン・ラフ

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この作品の一番の特徴はオリヴィア姫の執事マルヴォーリオを女性のマルヴォーリアに変えていることだ。演じるタムシン・グレイグが非常に達者で、そのコミカルな演技で観客を惹きつけ圧倒し、観ているうちに誰もがマルヴォーリアの事を大好きになってしまう。映像でも彼女に対する観客の拍手や歓声の大きさがそれを如実に伝えている。おかっぱの髪型といいカクカクした動きといい、片桐はいりの「もぎりさん」が思い浮かんで笑ってしまった。オリヴィア姫が自分に想いを寄せていると思い込んで舞い上がるマルヴォーリアの可愛らしさたるや! タムシンの演技があまりにもすばらしいので、マルヴォーリアに対するいじめや、騙されていたことを知って打ちのめされる様がすごく悲しくて辛い。全体には楽しく笑える喜劇なのだけど、マルヴォーリア周りに関しては深い悲哀が漂う結末だ。上映の最初にNTLive恒例の演出家や俳優のインタビュー映像が流れるのだけど、その中で今作では女性とか男性とか性別ではなく、人は人に惹かれて愛するのだという視点で描かれているという話が出てくる。なのにオーシーノは愛した小姓シザーリオが実は男性に扮した女性のヴァイオラだったことが分かると「yes!」(字幕では「よかったあぁぁぁ~」)と叫ぶのだ。これは自分が愛したのは女性だったことを安堵する気持ちと受け取れるので、インタビューで語られていた事とちょっとずれているのではないかと思った。あとこの作品は三方飾りの廻り舞台になっていて、階段状の三角の壁で舞台を区切り、この壁も動かすことでスピーディーな転換を上手に見せているのが良かった。