KAKUTA『或る、ノライヌ』

9/30 すみだパークシアター倉でKAKUTA『或る、ノライヌ』 作・演出:桑原裕子

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KAKUTAの舞台は「らぶゆ」「往転」「ひとよ」と観て4作品目だけれど、今回は出演者が劇団員のみということで、各メンバーをよく知る主宰の桑原裕子によるおそらく当て書きだろうか、それぞれの良さというか持ち味がよく活かされた脚本・配役だなと感じた。3匹の犬たちの視線を通して、人間の抱える孤独や身勝手さ、誰かを求めても報われないやるせなさが描かれていく。目の前から居なくなった想い人を探す旅に出て、相手が消えてしまったのではなく相手から自分が「消された」のだと知り、その現実を受け入れるのはとても苦しく辛いけれども、そこに重なる犬たちの言葉、捨て犬ではなくノライヌだ、人間に捨てられたのではない、自分はどこにでも行ける自由なノライヌなのだという言葉が、立ち上がって歩き出す勇気を与えてくれる。そっと優しく背中を押すような余韻の残る良い舞台だった。