『クリーン、シェーブン』

9/9 シネマート新宿で『クリーン、シェーブン』

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自分の頭には受信機、指には送信機が埋め込まれていると信じているピーター。常に頭の中で鳴り続けるノイズ、絶え間なく浮かんでは消える幻覚。施設を出所したピーターは里子に出された娘を探すために故郷に戻る。「ファーザー」は認知症を患った父親の視点で描かれていたけれど、この映画では精神的な病を抱えた男が認識している陰鬱な世界、その苦痛や哀しみに満ちたピーターにとっての“現実”が目の前に投げ出すように示されて、観ていて非常に辛い。ピーターに見えている・聞こえている現実は他者には感じることができないものだから、ただ娘にもう一度会うことを願っているだけなのに、彼の行動は周囲にはまったく理解してもらえない。神経を逆なでするような音の洪水の中、説明的な台詞や描写を排した演出は緊張感に満ちていて少しも気を抜くことができなかった。やり切れなさに胸が詰まる映画。疲労感と虚無感でクタクタになった。

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