EPOCH MAN『オーレリアンの兄妹』

8/18 下北沢駅前劇場でEPOCH MAN『オーレリアンの兄妹』 作・演出・美術:小沢道成 音楽:中村 中

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小沢道成と中村中が、親の虐待から逃げ出した兄妹を演じる2人芝居。紛れ込んだ“おかしな”家でこれからどうするかを話し合ううちに、2人の思いは次第にすれ違って諍いが激しさを増していく。音楽を中村中が担当しているということで、劇中2人が一緒に歌う曲がとても良かったので一曲だけではもったいなく、もっと全編に音楽劇という形にしてもよかったのではないかとか思った。兄の回想に出てくる暴力的な父親、育児放棄している母親を中村中がそれぞれ演じ分ける場面は哀しく胸が詰まる。家を出てきたものの「私はあのままでも我慢できた」という妹、このおかしな家でずっと1人で住み続けるという妹、なんでも勝手に決めないでという妹の言葉から、親から受けた抑圧を(おそらく無意識に)妹に対してぶつけ、妹を支配することでバランスを取ろうとしていたのであろう兄の姿があらわになっていく。負のスパイラルの辛さ。妹に責められて怒りが募っていく兄の心情を小沢道成が積み重ねていく演技で丁寧に演じていた。とても重たい内容で決して後味のよい舞台とは言えない。これから先の2人がどうなるのかは明かされることがなく、できることならば安心して居られる場所が見つかるようにと願うばかりだった。