ゆうめい『姿』

5/28 東京芸術劇場シアターイーストで、ゆうめい『姿』 作・演出:池田亮

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 私にとっては2017年にSTスポットで観た「弟兄」以来のゆうめい。この作品は2019年に上演されたものの再演とのことで、前評判はちらちら耳に入っていたのだけど、ゆうめいの場合“作者自身の体験を元にした物語”という部分が「弟兄」の時もクローズアップされていて(子供時代のいじめ体験が作者自身の実名で演じられる)、今作も作者の母親の物語を作者の実の父親も本人役で出演して描いているということで、これは事実であると敢えて観客に知らせる必要があるのだろうか、それを見せようとする意図はなんだろうか、などと考えて、チケットを買うかどうか結構迷った。結果的には事実は事実としてベースにありながら物語として消化されていたし、夫婦や親子の関係が炙り出されていく中で、高い能力がありながらも女性だというだけで職場で蔑ろにされ出世を阻まれ、男中心社会で我慢を強いられてきた女性の姿が浮かび上がってきて、ある家族の閉じられた話から外へ向かう視線も感じられて、とても良い作品になっていたと思った。板挟みの状態というのがひとつのキーワードになっていたと思うのだけど、それをまさに体現させるような舞台装置の使い方も良かった。のだけど影アナウンスをやるのが作者の実の母親で、客出しのアナウンスでわざわざそれを言うのはやっぱり余計な気がした。