こまつ座『日本人のへそ』

3/24 紀伊國屋サザンシアターで『日本人のへそ』 作:井上ひさし、演出:栗山民也

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幕が開くと舞台上にいる老若男女たちが指を折りながら、アイウエ王、サシスセ僧、タチツテ島など五十音を盛り込んだ物語を大声で語っている。これは吃音者のための発声練習だそうで、これから彼らは吃音治療の一環として音楽劇を演じていくことが明かされる。一幕では歌や踊りをふんだんに盛り込み、二幕は一転して会話中心の推理劇になる。1969年初演の井上ひさしデビュー作。言葉遊びの洪水、あっけらかんとした猥雑さ、地方と東京の格差への視線、権力に対する風刺、どんでん返しに次ぐどんでん返しとおしまいまで楽しく観たのだけど、同性愛者をネタにして笑いを取ろうとする部分はちょっと抵抗を感じた。初演から半世紀が経った今、このような扱い方に面白さは感じられないと思う。俳優たちは劇中劇で何役も兼ねる設定を精力的にこなし、中でも小池栄子の切れのあるパワフルな演技がとても良かった。