さいたまネクスト・シアター最終公演『雨花のけもの』

8/12 彩の国さいたま芸術劇場小ホールで『雨花のけもの』 作:細川洋平、演出:岩松了

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ほろびての細川洋平が新作を書き下ろし、岩松了が演出するということで、さいたまネクスト・シアターを最終公演にして初めて観てきた。社会に適応できない若者たちを集めてペットとして売買するというビジネス。聞いただけでうすら寒い気持ち悪さが漂うこの設定を細川洋平がどう扱うのかとても興味があった。まず、軸となる人物たちとそこに係わってくる人物たちという役割はあるものの、最終公演ということで出演者全員にある程度の出番を作る必要があると配慮したのだろうか、ここは無くてもいいのではというシーンや、いらないのではないかと感じる会話があったりして、少々回りくどい印象を受けたし、反対に例えば殺された男の死体はどうなったのかは明かされないままで、あ、そこはスルーするんだとか思ったり。目を覆いたくなる圧倒的な暴力を見せつけられたほろびての「コンとロール」が強烈だったため、観る前から勝手に身構えていたようで、肉体的な暴力シーンがないわけではないのだけれど、それよりも人間をペットとして飼おうとする人間の持つ歪んだ孤独だったり他者に対する支配欲だったりが中心に置かれていたと思う。ペットになった人間が性欲を持つことを封じられるのは、犬猫を去勢するのと同じ感覚なのだろうが、この強制は横暴で残酷な力の誇示だ。また一方で人間の多面性に対する視線、一言でこういう人だと簡単に説明できるような人間などいないということ、角度が変われば見え方も変わるのだということも物語を追いながら感じていたことで、はっきりと方向を示さず余白と余韻を残す結末に、しばらくはいろいろ思い返して考えることになりそうだ。舞台で観たことある方もない方もキャストはそれぞれ好演で、今後の活躍を祈りたい。あと小ホールの奥行きをとことんまで使った舞台美術がすごく力が入っていて印象に残った。