M&Oplaysプロデュース『いのち知らず』

10/26 本多劇場で『いのち知らず』 作・演出:岩松了

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山間のとある施設で守衛として働くロク(勝地涼)とシド(仲野太賀)。幼馴染の2人はお金を貯めていつかガソリンスタンドを経営するという夢を持っている。古参の守衛モオリ(三石研)に、この施設は死んだ人間を生き返らせる蘇生実験を行なっていると告げられても、2人はモオリの妄想だと言って相手にしない。モオリは2人に、兄が施設に収容されていると疑っているトンビ(新名基浩)を寮の2階に匿ってくれるよう頼む。施設の様子を探っていたある日、上司の安西(岩松了)が寮の部屋を訪れてトンビと顔を合わせてしまい…。出演者5人で綴られる不穏な空気に満ちた会話劇。最初はモオリの言葉を全く信じていなかった2人が、いつしか異なる考えを持つようになり対立していく。勝地涼と仲野太賀の息がとても合っていて間合いも絶妙だし、2人が激しく言葉を戦わせる場面は非常に見応えがあった。私は役者としての岩松了の煙に巻くような佇まいと醸し出される可笑しみがすごく好きで、今作でも少ない出番ながら立っているだけ一言喋るだけでとにかくひたすら面白い。場を浚うとはこれかという感じ。物語が進んでも施設の真実がはっきりと説明されることはなく、これはどういうことなんだ、もしかしたら、と観客は判断を委ねられる。不安を煽ったままの結末に至るまで「死」という言葉の影がずっと全体を覆っているような作品だった。岩松了の作品は必ず後を引いて思い出し考えずにはいられない。今回もその時間を楽しんで反芻することになりそうだ。