『イン・ザ・ハイツ』

8/11 TOHOシネマズ日比谷で『イン・ザ・ハイツ』

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ラテン系の移民たちが多く住んでいる街ワシントンハイツを舞台に、夢を追う若者たちの姿を描くミュージカル。音楽もダンスもとても楽しいし、カラフルな色彩にあふれた映像も心が弾む。移民たちの苦難の歴史や今も続く偏見など社会的な問題にも触れているのだけど、移民を取り巻く状況には60年以上前の「ウエスト・サイド・ストーリー」で描かれた世界から大きく変わっていない部分もあると感じた。ひとつは貧困という問題。ワシントンハイツの住人たちの多くは最低賃金で働く労働者だ。高給取りの人々が移り住んできたために地域の家賃が高騰し、もっと家賃が安い街へ引っ越さなくてはならない人も出てきている。またひとつはコミュニティーの中だけで築かれる結束ということ。「ウエスト・サイド」ではポーランド系とプエルトリコ系の不良グループが敵対するけれど、彼らは自分たちのグループ世界だけに住んでいて、メンバー以外には心を許すことをしない。この映画で描かれるラテン系コミュニティーの強い絆は胸を打つし、祖国の国旗を掲げろ、誇りを持てと歌うシーンもとても良いのだけれど、コミュニティーの外側には彼らを敵視・蔑視する人々が存在するという現実ゆえに、彼らは更にその結束力を高めていくのだ。コミュニティーの中だけで完結する人生が悪いとは言わないけれども、移民たちを取り巻く問題がここからも垣間見える気がした。とは言え、全体には非常に前向きで未来に向かってあきらめずに進んでいこうと伝えるお話なので、ノリの良い音楽とダンスを存分に浴びて元気をもらえる作品であることは間違いない。主人公のウスナビのちょっとヘタレだけどすごくいい奴という人物像も好感度大だった。

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