『ライトハウス』

7/22 TOHOシネマズシャンテで『ライトハウス

f:id:izmysn:20210725115032j:plain

絶海の孤島にやってきた2人の灯台守。ベテランのトーマス(ウィレム・デフォー)と新人のイーフレイム(ロバート・パティンソン)は、これから4週間に渡って島と灯台の管理を行なうのだけど、高圧的に指示を出すトーマスにイーフレイムは反感を抱き、初日から2人は衝突を繰り返す。険悪な雰囲気に日々募る不満を何とかやり過ごし、明日で仕事は終わり、やっと島から出られるという夜に大嵐がやってきて、迎えに来るはずの船は訪れず、2人は島に閉じ込められてしまう。

幕開きから大音量の霧笛の音、海鳥たちの鳴き声、響き続ける機械音などが不穏な空気を醸し出していて、この先には不吉な展開が待っているのだという予感から逃れられない。この映画のスクリーンは横長ではなくほぼ正方形で、ここに2人の人物が向き合って映ると非常に距離が近くなり、物理的にも心理的にも2人が置かれている状態の閉塞感が強く伝わってくる。また灯台の高さというのを観客が感じやすくなり、灯台の一番上(灯室)はトーマスの領分であり、イーフレイムは下から見上げるだけで絶対にそこには入れない、という身分差・階級差を建物の高低差が表しているとも言える。イーフレイムが不満や怒りを我慢できていたのは4週間という期限があったからで、孤立状態がいつまで続くか分からない状況に置かれた途端イーフレイムは感情を爆発させる。そしてここからこれは現実なのかイーフレイムの幻想なのか判断がつかない場面が続くのだけど、嘘をついているのはどちらなのか、本当は何が起きたのか、謎に明らかな答えは示されず解釈は観客に委ねられる。孤島という密室の中で、ほぼこの2人の会話だけで物語が進み、まるで舞台劇を観ているようなだった。常軌を逸した言動に堕ちていく2人を演じたウィレム・デフォーロバート・パティンソンもすばらしく、モノクロ画面が2人の表情をさらに引き立ててその陰影に引き込まれる。狂気と暴力に満ちているけれどきっと何度も思い返したくなる、そんな映画だった。

youtu.be