シス・カンパニー『友達』

9/8 新国立劇場小劇場でシス・カンパニー公演『友達』 作:安部公房 演出・上演台本:加藤拓也

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公式サイト掲載の<あらすじ>

ある夜、ひとりの男(鈴木浩介)の日常に忍び寄る、見知らぬ「9人家族」の足音。
祖母(浅野和之)、父母(山崎一キムラ緑子)、3人兄弟(林遣都・岩男海史・大窪人衛)、3人姉妹(富山えり子有村架純伊原六花)から成る9人家族は、それぞれに親しげな笑みを浮かべ、口々に隣人愛を唱えながら、あっという間に男の部屋を占拠してしまう。
何が何だかわからないまま、管理人(鷲尾真知子)、警察官(長友郁真・手塚祐介)、婚約者(西尾まり)、弁護士(内藤裕志)と、次々に助けを求め、この不条理な状況説明を試みるが埒があかない。
しかも、彼らは、どんどん「家族の論理」に加勢していく流れに…。
「9人家族」の目的は何なのか?
どこからが日常で、どこからが非日常なのか?
男を待ち受けるのは、悲劇なのか、
はたまた救済なのか?

 

原作は未読だったので上記のあらすじだけ頭に入れて観たのだけど、物語が進むにつれて気持ち悪さが否応なしに増していき、こんな状況に陥ったらものすごく嫌、絶対に嫌というザワザワ感に肌が粟立つ。自分たちの正義を振りかざして、自分たちこそが正しいと一片の疑いも持たずに信じて、すべては相手のためを思っての行動だと言い張る。ほんとうに何なんだ、この人たちは。恐ろしすぎて泣きたくなった。阿部公房がこの作品を発表した1967年から半世紀以上が経って多様性とか寛容の精神という言葉が言われるようになっても、同調圧力的な連帯を強いられる息苦しさは現代社会にも強く響くものだと思う。不条理な事態に翻弄される男を演じた鈴木浩介が今回もとても良かった。昨年12月の「23階の笑い」今年3月の「ほんとうのハウンド警部」それに本作と、山崎一鈴木浩介が共演した作品を続けて観ることができて、どちらも好きな俳優さんなので嬉しいことだ。そして観劇後これはやはり原作を読まなければという気持ちになり、新潮文庫買って帰った。