新ロイヤル大衆舎『王将』-三部作-

6/5 KAAT神奈川芸術劇場で新ロイヤル大衆舎『王将』-三部作-  作:北條秀司、演出・構成台本:長塚圭史

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 KAATの1階広場(アトリウム)に特設劇場を設営して、伝説の棋士坂田三吉の生涯を3部構成で描く本作、一挙上演の日を選んで3部続けて観てきた。

公演は今日(6/6)が千穐楽なのだけど、この特設劇場がほんとに昔の芝居小屋のような雰囲気でなかなか良かったので、その様子を紹介している新ロイヤル大衆舎のyoutubeはこちら。


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明治39年(1906年)、大阪では素人名人と呼ばれるほどの存在ながらプロ棋士との対戦で惜敗した悔しさから将棋の道を究めていくことを心に誓った三吉が、昭和21年(1946年)に76歳で亡くなるまでの40年間。家族や弟子、後援会の人たちとの交流や別れ、東京の将棋連盟との対立、将棋界からの孤立など、その波乱万丈な生き様を人情味あふれる語り口で描き出していく。将棋のことしか頭になくて、周囲を振り回しながらも憎めない愛嬌があり、誰もが愛さずにはいられない人物として坂田三吉を演じた福田転球、本当にすばらしかった。あの可愛らしさはちょっと無敵だと思う。周りの俳優たちもとても良かったし、三吉と女房小春(常盤貴子)以外のメンバーは老若男女とわず何役も兼ねていて、待機している袖、といっても幕一枚で隔てただけの場所なのだけど、その様子がちらちら見えてきたりするのも楽しい。暗転もできない空間の中で、照明がすごく良い仕事をしていたのも印象に残った。また出演者のほとんどが関西出身ということで“大阪愛”も強く感じられて、このあと予定されていた大阪公演がコロナの影響で中止になったのはとても無念であろうし、大阪ではきっとまた一段違う盛り上がりをみせる芝居だと思うので、いつの日か大阪公演が実現しますようにと願いたい。