『ノマドランド』

3/26　TOHOシネマズ日比谷で『ノマドランド』

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2008年のリーマン・ショックに端を発して世界規模で発生した金融危機。仕事も家も無くし、キャンピングカーやヴァンで各地を転々として、短期の肉体労働で日銭を稼ぐ高齢の放浪者たち。貧困や格差という社会問題を背景に、この映画では地球を住まいとして暮らす人々の姿を通して、人間らしい生き方とは何か、自由とは何かを静かに観客に問いかける。主演のフランシス・マクドーマンドがほんとうに素晴らしかった。60歳を過ぎて旅の生活を選び、何があっても自分らしさを失わず、逞しく誇り高く生きている女性を圧倒的な存在感で演じている。数人の俳優以外は実際にノマド生活をしている本人たちが出演しているのだそうで、実体験を語る彼らの姿はドキュメンタリー映画を観るようでもあり、またアメリカの広大な自然の景色を非常に美しい映像で見せるロードムービーとも言えると思う。家がなく車で寝起きしていると聞いて想像しがちな悲惨さとか暗さではなく、観終わった後には不思議な清々しさが胸に残り、縛られることなくどこにでも行ける、生きていける、それだけで大丈夫、そんな気持ちになる映画だった。