『ダム・ウェイター』

3/24 小劇場楽園で『ダム・ウェイター』 原作:ハロルド・ピンター、演出:大澤遊

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 全くの予備知識なく、河内大和が出演するというだけの理由でチケットを買ったのだけど、非常に見応えのある作品だった。地下室にやってきて仕事の連絡を待っている二人が「殺し屋稼業」であるらしいことが会話の端々から少しずつ明らかになり、観劇後にチラシを見たら堂々と殺し屋と書いてあって、でもそうと知らずに観ている間はもしかしたらそうなのかな違うのかなと探るような気持ちで一言一言にめちゃ集中した。何者かによってドアの下から届けられたマッチや、突然動き出したダム・ウェイター(料理昇降機)に入っている料理の注文メモが何を意味しているのか、戸惑い混乱していく二人。兄貴分のベン(河内大和)と新入りのガス(伊礼彼方)は組んで仕事をしてきた中でそこそこ信頼関係を結んでいるようだけど、組織に対する思いには温度差があるようだ。この物語にはっきりとした答えはなくて、結末には観客それぞれの解釈が可能であり、私はベンが組織からひそかにガス殺害の指示を受けていたのだと思ったけれどもどうだろう。幕開きから最後までヒリヒリした緊張感に満ちた70分。河内大和は台詞の上手さはもちろんのこと、この舞台では例えばスッスッスッと三歩後ろに下がるその動きだけでベンの臆病さやヘタレ具合を見事に表していて、その巧みな身体表現にも感心した。