『旅立つ息子へ』

3/29 TOHOシネマズシャンテで『旅立つ息子へ』

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自閉症スペクトラムの息子のために人生をささげてきた父親。そんな父親をひたすら愛する心優しい息子。2人の深い絆を繊細に描いたイスラエル映画。息子のウリを自分以上に愛せる者はいないと固く信じるアハロンは、全寮制の障害者施設に入ることが決まったウリを連れて逃避行の旅に出る。別居中の妻タマラが「一人になるのが寂しいからウリを利用している」と言うように、実は子離れできずウリを手放せないでいるのはアハロンなのだ。タマラは父親との生活しか知らないウリにもっと広い世界をみせたいと思っている。また言動は幼くてもウリは健康な性欲と身体を持った20歳の青年であることを伝える描写が劇中にはあるのだけど、息子を溺愛しているアハロンはいつまでも小さな子供を扱うようにウリに接し、耳も目も閉ざして成長したウリの本当の姿を認めようとしない。そんな親子を演じた俳優2人の演技はすばらしく、自然でありかつ説得力がある。そしてこの映画ではウリ自身が父親からの自立を選ぶというところがとても良い。自分から旅立っていくウリの後姿を見つめるアハロンの、嬉しさと寂しさがない交ぜになった表情(「グッド・ウィル・ハンティング」ラストシーンのベン・アフレックを思い出した)は切なく胸に迫るが、ウリが自分の道を自分で決めたように、これからはアハロンも自分の人生に向き合って生きる選択をしてほしいと願わずにいられなかった。