『藪原検校』

2/18 PARCO劇場で『藪原検校』 作:井上ひさし、演出:杉原邦生

f:id:izmysn:20210219173625j:plain
f:id:izmysn:20210219173640j:plain

新生PARCO劇場オープニング・シリーズの内容が発表された時に、これはぜひ観たいと一番に思った作品。ずいぶん昔に地人会の公演で観たことがあるけど、今回は杉原邦生演出ということでどんな舞台になるのか楽しみにしていた。まず何といっても猿之助さんの“杉の市”が期待通り非常に良かった。金と欲にまみれ、出世のために人殺しを重ねていく非道な悪党を、思うがままに気持ちよく演じていて、歌舞伎の手法も取り入れた演出には猿之助さんの意向も反映されているのだろうなと感じた。早物語の語りはさすがの面白さ。そして悪の凄みと愛嬌あふれる軽妙さに加えて母親に対する愛情も切々と演じて観客を引き込んでいき目が離せない。圧倒される杉の市だった。セットは壁一面に落書きのある現代の街角という感じ、そこに張られたロープを縦横に動かすことで場面が室内になったり船の中になったり山道になったり日本橋になったりする。生ギターの演奏も、照明の確かな仕事も印象に残る。また効果音として使われる車のクラクションや飛行機のジェット音が、現代風のセットとあわせて、この物語で描かれる虐げられ踏みつけにされ穢れとされる者たちの存在、上から目線の差別意識などが今の時代にも変わらずにあることを伝えて考えさせられる演出になっていると思った。