午前十時の映画祭『ファイト・クラブ』

12/8 TOHOシネマズ日本橋で『ファイト・クラブ』(1999年)

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デヴィッド・フィンチャー監督作は1995年の「セブン」が、ブラッド・ピットモーガン・フリーマンケヴィン・スペイシーという絶妙なキャスティングも含めてやはり断トツ面白いと思うのだけど、その4年後に同じくブラッド・ピットを起用して作成されたこの『ファイト・クラブ』を映画館で観るのは初。高度消費社会の中でブランド品に囲まれカタログ通りの生き方をしていた平凡な男が、殴り合い血を流して闘うことを通して自分自身の人生を取りもどそうとする。主人公の「僕」(エドワード・ノートン)がこうありたいと願う理想の男性像、そのすべてが詰まった存在として生み出された別人格タイラー(ブラッド・ピット)のマッチョぶりがちょっと漫画っぽいと感じるほど誇張されて描かれている。職場では目立たない地味な存在の男たちがファイト・クラブで得る高揚感・充足感は、階級社会への反逆とも取れる気がする。殴り合いシーンの描写は本当にその痛みが伝わってくるような容赦なさ。社会の中で目的もなくただ何となく生きていた、疑問を感じることもなくただ流されるように日々を送っていた「僕」と同じように、大半の観客はタイラーの傍若無人でやりたい放題の生き方に惹きつけられ、それがこの映画の魅力でもあるのだと思う。けれども男の価値とか男らしさの証明とか全編通して男性目線中心の話ではあるので、資本主義社会に物申すという部分は理解できても、共感という感想は持ちにくい映画。とはいえエドワード・ノートンの演技はとても良い。