六月大歌舞伎から 第二部『桜姫東文章 下の巻』

6/9 歌舞伎座で『桜姫東文章 下の巻』

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大評判だった4月の「上の巻」を受けて、一席ずつ空けての販売とはいえ完売・満席の歌舞伎座で「下の巻」鑑賞。今月も仁左衛門さんと玉三郎さんの若々しさと美しさに目を見張り、奇跡のようなお二人の演じる南北の世界を心から堪能した。岩淵庵室の場で共に死のうと桜姫に迫る清玄と抵抗する桜姫の立ち回り、ひとつひとつの見得に息をのみ引き込まれ、この場は清玄と権助の早変わりも見どころで、仁左衛門さんの権助は滲み出す悪党の色気がほんとうに素敵だ。権助住居の場で権助が父と弟を殺した仇であることを知った桜姫が権助を殺害する場面、この2回目の立ち回りも客席は大いに沸いて拍手喝采だった。そして殺したり殺されたりの物語ながら、やはり仁左衛門さんと玉三郎さんはお互いのことがほんとに好きなんだろうなあという雰囲気が芝居の中でも垣間見えるのが、お二人が共演する演目の魅力のひとつになっていると思う。「桜姫」を通しではなく、上下に分けて上演することで実現したという今回の再演。おそらくこのお二人でもう一度の再演はないだろうけれど、役者の年齢を超えて伝わる芸の素晴らしさと歌舞伎の面白さを存分に伝えてくれる上演だった。観られてほんとうに良かった。