スティーヴ・ハミルトン『解錠師』、ジェイン・オースティン『高慢と偏見』

2/21 スティーヴ・ハミルトン『解錠師』読了。

3/5 ジェイン・オースティン高慢と偏見』読了。 

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 『解錠師』 やたら固い日本語タイトルよりも原題の「The Lock Artist」の方が小説の内容を端的に表している。どんな鍵も開けることができる主人公マイクの技術はまさに芸術だし、彼が絵を描く才能に恵まれていることもまた「Artist」にふさわしい。17歳のマイクが凄腕の金庫破りになるまでの出来事と、犯罪組織の手下となった彼が逮捕されるまでの出来事が、刑務所でマイクが書く手記という形で交互に記されるので、ある章で結果を先に知り、次の章でその原因を知るみたいな逆転も起きる構成。そして8歳の時に起きた事件が元で言葉を話すことができなくなったマイクが、恋人のアメリアと文章ではなく漫画で交わす手紙が最後にまた効いてくる設定。ハヤカワ文庫から出ているけれど犯罪小説とかミステリーというよりも、これは一人の高校生を主人公にした青春小説であり、若い恋人たちのラブストーリーで、10代の人たちにお薦めなのではないかと思った。

高慢と偏見』 それこそいくつもの翻訳がいろんな出版社から出ているのでどうしようかと思いつつ、ちくま文庫版を買ってようやく読んだ。恋のさや当てを描いた恋愛小説だと思ってなかなか手が出なかったのだけど、これがとても面白く頁を繰るのが楽しみで、おしまいまで一気に読んだ。最初に激しく反発しあった二人が最後には結ばれるというのはまあ予想通りの展開で、特に大きな事件があるわけでもないのだけれど、作家の人間に対する観察眼とユーモアがほんとうに秀逸で、時に厳しくまた時に優しい眼差しで、登場人物たちをいきいきと個性的に魅力的に描き出している。名著100冊とかに選ばれているのも納得。この小説の原案となるものをジェイン・オースティンが「第一印象」というタイトルで書いたのが20歳の時というのも驚く。映画「ブリジット・ジョーンズの日記」がこの小説を元ネタにしているということを私は今回初めて知ったのだけど、なるほど映画は原作の設定をほぼそのままに活かしたものだったと理解した。