『みんな我が子 ーAll My Sonsー』

 5/11 シアターコクーンで『みんな我が子』 作:アーサー・ミラー 演出:リンゼイ・ポズナー

第二次世界大戦後のアメリカ。戦争特需で財をなしていたジョー・ケラー(堤真一)は、一家で幸せそうに暮らしていた。
隣人の医師ジム(山崎一)とも良好な関係だ。
しかし妻ケイト(伊藤蘭)は戦場から戻らぬ次男の帰りを今も待っている。
そこへ次男の婚約者アン(西野七瀬)が訪ねて来た。
ケラー家の長男クリス(森田剛)は密かに彼女に想いを寄せている。
さらに現れたのはアンの兄ジョージ(大東駿介)。
彼の訪問はケラー家が抱える過去の闇を焙り出し――。

 

アーサー・ミラーが書いたこの作品を舞台で観るのは初めてだ。ジョーとクリスは次男のラリーはすでに戦死したに違いないと思っている。息子は必ず帰ってくると信じるケイトは、ラリーの婚約者アンとクリスが親しくなるのが面白くない。裕福で何不自由なく暮らしているケラー家だけど、夫婦間、親子間に流れる空気は微妙で上っ面だけの平穏という雰囲気がそこここに顔を覗かせる。ジョージとアンの父親はジョーの共同経営者で今は服役中(工場から出荷した不良部品のせいで戦闘機が墜落したため)なのだけれど、ジョージは実はジョーも共犯であり父親は罪をひとりで負わされたのだと考え、ジョーを問い詰めるためにケラー家にやってきたのだ。ジョーは本当に何も知らなかったのか、その言葉は嘘か真か。観客はその成り行きを見つめ、最後に明かされた真実が悲劇を招く。ひとつの家族の話を通して戦争によって築いた富に対する目線、正義はどこにあるのかという問いが炙り出される。のだけれども物語を大きく動かす役割を担うケイトとアンを演じる女優二人が男優陣に比べて弱すぎると思った。ここすごく大事なのではと思う場面もテンションが上がらず、観ていて時々眠気が差してしまったのは残念だった。