『死刑にいたる病』

5/10 UPLINK吉祥寺で『死刑にいたる病』

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映画の冒頭、タイトルロールが出る前の15分ほどの間に、安部サダヲ演じる連続殺人犯が被害者の少年少女たちを目を背けたくなるような残虐さで拷問する様が描かれて、いきなりこれを見せつけるのかと驚いた。最初にこの榛村大和という男の犯した犯罪をあからさまに示すことで、榛村(安部サダヲ)と雅也(岡田健史)の面会室での会話が否が応でも緊張感を増し、この会話のシーンこそが見せ場となる映画だ。とにかく阿部サダヲの奥深い闇を感じさせる真っ黒な瞳に背中がゾクゾクする。なぜ人を殺したのかと問われても「自分にとって必要だった」としか言わない榛村。人を殺すことを心から楽しんでいる人間であることが恐ろしいのだ。普段は人当たりのいい街のパン屋を演じ、褒め殺しで相手の承認欲求を満たすことで人心を操るこの殺人鬼に、いつの間にか雅也も周りの人間も惹きつけられていく様がスリリングで、真犯人は誰かという推理劇の要素もあり、全く飽きることなく物語を追った。これまでに観た白石和彌監督作の中では私は今作が一番面白かった。