『日本のいちばん長い日』

8/13 池袋の新文芸坐で『日本のいちばん長い日』(1967年)

昨年読んだ半藤一利の原作が非常に面白かったのだけれども映画はこれまで未見で、毎年8月に本作を上映しているという新文芸坐でようやく観ることができた。玉音放送が流されるまでの24時間に起きた出来事を1時間ごと24章に分けて追っていく原作を、2時間37分の映画にまとめるために、大きな流れをダイジェストで描く形になっているのは致し方ないところだと思うけれど、橋本忍の脚本はポツダム宣言から終戦前日までを冒頭30分で示し、そこで初めて「日本のいちばん長い日」という作品タイトルが出て、そこから一気に観客をスクリーンに引き込む。物語は内閣の無条件降伏をめぐる駆け引きと、一部の将校が決起して玉音放送を阻止しようと皇居を占拠した「宮城事件」を中心に描かれていくのだけど、オールスターキャストの出演者たちは、ほんのワンシーンだけの登場でも実際に戦争の時代を経験しているからこそ表現できると感じるリアリティがある。セットもかなり作り込まれていて事実の再現に力を入れて製作されたことが伝わってくる。阿南陸軍大臣を演じた三船敏郎はもちろんのこと、鈴木貫太郎首相役の笠智衆がすばらしかった。映画の最後に「この戦争で300万人が死んだ」という字幕を入れるのは岡本喜八監督の拘りだったという記事を読んだけれど、原作から強く感じた反戦への想いがこの文言によっても示されていると思った。