NODA・MAP『Q』:A Night At The Kabuki

8/12  東京芸術劇場プレイハウスでNODA・MAP『Q』:A Night At The Kabuki  作・演出:野田秀樹 音楽:QUEEN

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12世紀の日本、激しく対立する源氏と平家。その戦下、たった5日間――432,000秒の恋に身を焦がす若き瑯壬生(ろうみお)と愁里愛(じゅりえ)。すれ違って死を迎えるはずの2人が、もしも生きていたら……。

2019年の初演時のチケットは即日完売で手に入れることができず、今回も争奪戦だろうなと思っていたのだけど、先行抽選でも一般販売でも案の定買えなくて、追加で販売された2階立ち見席のチケットでようやく観ることができた。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の世界を源平の争う時代に置き換えて、引き裂かれた恋人たちの悲劇を描く物語に、SNS時代の弊害や戦争の歴史への目配せも織り込んでいる。この作品では生き延びた瑯壬生と愁里愛がなにかと生き急ぎがちな若い自分たちのそばに現れて間違いが起きないようにあれこれ手を回す、ということで舞台上には2組のロミオとジュリエットが居る。そしてQUEENの「ラブ・オブ・マイライフ」がこの恋人たちのテーマ曲という感じで使われていて、大音量で流れる「ボヘミアン・ラプソディ」ももちろん印象的だったけれど、このあたりは完全に最初から音楽の持つインパクトありきで、あえてそこに乗っかって作っていると思った。若い瑯壬生と愁里愛を演じた志尊淳と広瀬すずがとても愛くるしく、瞬く間に恋に落ちる2人をまっすぐいきいきと演じている。のちの瑯壬生と愁里愛は上川隆也松たか子で、生き延びはしたものの2度と再び会うことが叶わなかった2人の、それでも消えることのなかった互いへの想いが切々と胸に迫る。瑯壬生からの手紙を読む終盤のシーンの松たか子は本当に本当にすばらしかった。人が人を愛することの尊さを強く伝えるとともに、争いを繰り返す人間の愚かさも突き付ける、とても見応えのある作品だった。

Q:A Night at the Kabuki | NODA・MAP 第25回公演