『ドライブイン カリフォルニア』
6/1 本多劇場で『ドライブイン カリフォルニア』 作・演出:松尾スズキ
舞台は、裏手に古い竹林が広がるとある田舎町のドライブイン。経営者のアキオ(阿部サダヲ)は妹に対して、兄妹愛と括ってしまうにはあまりにも純粋な思いを抱いていた。妹マリエ(麻生久美子)は14年前、店にたまたま訪れた芸能マネージャー若松(谷原章介)にスカウトされ、東京でアイドルデビューするも結婚を機に引退。その後、夫の自殺など数々の経験を重ね、中学生の息子ユキヲ(田村たがめ)と共に地元に帰ってくる。このカリフォルニアという名のドライブインには、腹違いの弟ケイスケ(小松和重)、アルバイトのエミコ(河合優実)が働いていた。そして兄妹の父親ショウゾウ(村杉蝉之介)、高校教師の大辻(皆川猿時)、アキオの恋人マリア(川上友里)、若松の妻クリコ(猫背椿)、クリコの不倫相手ヤマグチ(東野良平)などを巻き込み、複雑に時が流れだす…
1996年の初演も2004年の再演も未見で、今回初めて観ることができたのだけど、松尾スズキ作品の中では毒が控えめというか、登場人物はみんなどこかしらちょっとおかしくて困った人たちではあるけれど根っからの悪人は一人もいなくて、一幕物で展開も分かりやすい。夫婦、親子、兄妹の関係が絡み合って描かれるけれど、互いに相手を思いやる気持ちがもとにあって、身近な人の死を乗り越えて生きていく人間に向けられた視線が優しいと感じる舞台だった。大人計画のメンバーの安定した面白さは言わずもがなで、息の合った台詞の掛け合いと間で確実に笑いを引き出していく。好き放題やっているようで余計なことは一切しないのが気持ちいい。客演の俳優陣もとても良い。大好きな川上友里の唯一無二感は今作でも全開で、登場シーンで客席からは大きな笑いが起こって、この作品で初めて川上友里を観たひとにもきっとすごく印象に残ったに違いないと思うと勝手に嬉しかったし、河合優実の思い切り振り切った演技はとても魅力的でまた出演舞台を観たいという気持ちになった。今日は補助席までいっぱいの満席で、松尾作品の人気の高さを実感。観られてほんとに良かった。