『リスペクト』『モーリタニアン 黒塗りの記録』

TOHOシネマズ日比谷で、11/15『リスペクト』、11/19『モーリタニアン 黒塗りの記録』

f:id:izmysn:20211121165506p:plain
f:id:izmysn:20211121165515p:plain

 

『リスペクト』 アレサ・フランクリンの伝記映画で、その幼少期から歌手デビュー、なかなかヒット曲が出ない不遇時代、その後世界的な歌手となっていく姿を追っている。今年6月に観た映画「アメージング・グレイス」で描かれていたゴスペルライブのシーンで映画は終わり、その後の活躍と亡くなるまでの出来事は本人の映像と字幕で紹介されていた。ジェニファー・ハドソンの演技はとても良かったし歌もしっかり聞かせるのだけど、エンディングで流れるアレサ本人の歌声はやはり圧巻。比べる者なき“クイーン・オブ・ソウル”。なので、10代前半での望まない妊娠と出産とか、高圧的で支配的な父親との確執、DV夫から受ける暴力などその人生の辛い面を観客に知らしめるよりも(もちろん男たちから自立し自分の道を選んで進んでいくという展開はあるものの)例えば松竹ブロードウェイシネマ「ジャニス・ジョプリン」のように、アレサ・フランクリンという稀有な才能と音楽を思いっきり心から楽しむ映画として観たかったなと思った。

youtu.be

モーリタニアン 黒塗りの記録』 北アフリカモーリタニア出身のモハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)は9.11の実行犯に係わった疑いで拘束され、起訴もされず裁判も開かれないままキューバグアンタナモ収容所に何年も投獄されていた。9.11テロから4年後の2005年、人権弁護士のナンシー(ジョディ・フォスター)はスラヒの弁護を引き受け、不当な拘禁だとアメリカ合衆国を訴える。対してテロに対する厳しい姿勢を国民に示したい政府は、スラヒに死刑判決を下すよう米軍に命じ、スチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴を担当することになる。無実を訴え続けるスラヒを対象に真相を明らかにすべく両者の闘いが始まる。この両サイドからの地道な調査の状況が折り重なるように描かれていき、事件の様相が観客に示されていく過程がとてもスリリングだ。そしてナンシーはスラヒから届いた手紙によって、スチュアート中佐は政府の機密書類に記された内容によって、スラヒに加えられた壮絶な拷問の数々が明かされるシーンは、そのあまりにも非道残虐な行為に言葉を失う。スラヒが獄中での体験を綴った手記をまとめた原作を映画化した実話ベースの作品で、ジョディ・フォスターの演技はすばらしく、人間の尊厳・権利を守るために戦う姿は非常に説得力がある。また命令と信念のあいだで苦悩する良心のひとスチュアート中佐役のカンバーバッチの繊細な表現も見応えがあった。

youtu.be