『プアン/友だちと呼ばせて』『マルケータ・ラザロヴァー』

8/10 UPLINK吉祥寺で『プアン/友だちと呼ばせて』『マルケータ・ラザロヴァー』

 

『プアン/友だちと呼ばせて』

NYでバーを経営するボスのもとに、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話が入る。白血病で余命宣告を受けたので、最期の頼みを聞いてほしいというのだ。タイに駆けつけたボスが頼まれたのは、元恋人たちを訪ねる旅の運転手。カーステレオから流れる思い出の曲が、二人がまだ親友だった頃の記憶を呼びさます。忘れられなかった恋への心残りに決着をつけたウードを、ボスがオリジナルカクテルで祝い、旅を仕上げるはずだった。だが、ウードがボスの過去も未来も書き換える〈ある秘密〉を打ち明ける―。

ウードの亡くなった父親はラジオのDJで、生前の放送を録音したカセットテープが二人の旅の車中でずっと流されている。現在のタイを舞台にした映画だけれど、この昔懐かしいカセットテープが小道具として効いていて、元カノたちを訪ねるウードの物語はテープのA面で、そこからボスの物語がB面として始まる展開に意表を突かれた。“難病”と“友情”という組み合わせは目新しいものではないけれど、泣かせにくるような作り方ではなくコミカルで笑えるところもたくさんあり、明かされた秘密に「そうだったのか」と驚くと同時に前半で描かれていた諸々の事情にも思い当たり合点がいく。主役の二人が好演で、優しい余韻が残る良作。

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マルケータ・ラザロヴァー』

舞台は13世紀半ば、動乱のボヘミア王国
ロハーチェックの領主コズリークは、勇猛な騎士であると同時に残虐な盗賊でもあった。ある凍てつく冬の日、コズリークの息子ミコラーシュとアダムは遠征中の伯爵一行を襲撃し、伯爵の息子クリスティアンを捕虜として捕らえる。王は捕虜奪還とロハーチェック討伐を試み、元商人のピヴォを指揮官とする精鋭部隊を送る。
一方オボジシュテェの領主ラザルは、時にコズリーク一門の獲物を横取りしながらも豊かに暮らしていた。彼にはマルケータという、将来修道女になることを約束されている娘がいた。
ミコラーシュは王に対抗すべく同盟を組むことをラザルに持ちかけるが、ラザルはそれを拒否し王に協力する。ラザル一門に袋叩きにされたミコラーシュは、報復のため娘のマルケータを誘拐し、陵辱する。部族間の争いに巻き込まれ、過酷な状況下におかれたマルケータは次第にミコラーシュを愛し始めるが…

スクリーンから迸るようなエネルギーに圧倒される166分。映画の冒頭こそ「これはもしや寝落ちしてしまうかも」と危惧したのだけれども、観ているうちにグイグイと物語に引き込まれて目をそらすことができない。非常に壮大な歴史劇であり且つ争いの日々の中で露呈する人間の獣性、神や自然に対する畏怖と冒涜、憎しみと愛に翻弄される人々の姿を容赦なく描いた作品だ。「綿密、大胆、崇高、獰猛」というレビューに納得。この映画の欲望と復讐に満ちた世界は残酷だけれど底知れない生命力に溢れている。映像に寄り添う幻想的な音楽も非常に耳に残った。

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