『広島ジャンゴ 2022』

4/13  シアターコクーンで『広島ジャンゴ 2022』 作・演出:蓬莱竜太

<公式サイトのあらすじ>

舞台は現代の広島の牡蠣工場。
周囲に合わせることをまったくしないシングルマザーのパートタイマー山本(天海祐希)に、シフト担当の木村(鈴木亮平)は、手を焼いていた。
ある日木村が目覚めると、そこはワンマンな町長(仲村トオル)が牛耳る西部の町「ヒロシマ」だった!
山本は、子連れガンマンの「ジャンゴ」として現れ、木村はなぜかジャンゴの愛馬「ディカプリオ」として、わけもわからぬまま、ともにこの町の騒動に巻き込まれていく―――!

 

西部劇の部分は木村が見ている夢の中という枠に入っているのだけど、この作品は現代に蔓延るさまざまなハラスメントを取り上げて、上司の言いなりだった木村が「ヒロシマ」での経験を経て、理不尽な言動に勇気を奮い起こして立ち向かうようになるまでを描いている。木村役の鈴木亮平がとても良い。人の顔色ばかり伺っている気の小さい男が、良心と押し付けられた仕事の狭間で抱える葛藤を丁寧に演じていて、ラップのシーンもとても楽しい。本人のひとの良さというか観客に愛される愛嬌がよく活かされていると思った。コミカルで笑えるシーンも多いのだけど、舞台の終盤、悪徳町長が「俺みたいな人間は世の中から居なくなることはない」(ハラスメントはなくならない)というのに対して「ジャンゴも居なくならない」(声を上げることをやめない)という天海祐希の台詞から、ハラスメントを他人事にしない、見ないふりをしない、そこから変化は起こせるはずだという作品に込められた思いが伝わってくるように感じた。