『ナイトメア・アリー』

3/25  TOHOシネマズ日比谷で『ナイトメア・アリー』

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ギレルモ・デル・トロ監督の新作。はっきりと二部に分かれた展開になっており、怪しげな見世物を売りにしているカーニバル一座に流れ着いたスタン(ブラッドリー・クーパー)がそこで働くうちに読心術を身につけ、電流ショーをやっているモリールーニー・マーラ)と恋をして2人で一座を出ていくことにするまでが前半。2年後、読心術ショーで人気を博していた2人の前に精神科医リリス・リッター博士(ケイト・ブランシェット)が現れる。トリックを見破られそうになったスタンはリリスと共謀し、リリスの顧客である富裕層に霊媒のふりをして近づいて、金目当ての騙しを始めるが…というのが後半。見世物小屋の作り込まれたセットやショーの世界の裏側を興味深く描いた前半はワクワクしてとても面白かったのだけど、後半はテンポがないというか退屈な展開で時々眠気が差してしまった。ケイト・ブランシェットのゴージャスな雰囲気も最初から最後まで実はスタンを手玉に取っていたのだと明かされる悪女振りも見事だけれども、少々誇張され過ぎではという感じもした。ブラッドリー・クーパーは冒頭で匂わされる闇を抱えた男という部分よりも、悪党になり切れずどこかしら抜けている男の小物感がよく出ていていてよかったと思う。予告動画で何度も「これは人間か、獣か」と繰り返されるけれど、なるほどこれは人間が持つ獣の部分、隠れた獣の顔を描く映画なのだと物語を追ううちに解ってくる。獣人として見世物にされた男の顛末を前半に丁寧に見せておいての後半の因果応報の結末。わりと読める展開ではあったけれども、これできれいにひとつの輪が繋がった感じで、最後はこうなるしかないよなあと気分がざわざわしつつも納得した。