午前十時の映画祭『イングリッシュ・ペイシェント』

3/30 TOHOシネマズ日本橋で『イングリッシュ・ペイシェント』(1997年)

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第二次世界大戦を背景に、ハンガリー人の伯爵アルマシーとイギリス人の人妻キャサリンの不倫を描いた大メロドラマなのだけど、アンソニー・ミンゲラ監督は恋に落ちていく2人の心理をとても丁寧に追っており、美しい映像と音楽の効果も相まって、非常に格調高い愛の物語になっている。また戦争の悲惨が登場人物たちの人生を翻弄する様も静かな怒りを持って描かれる。あらためて観て感じたのは、やたら自意識が高くてひねくれた男、所有されるのも所有するのもごめんだとかほざいていた男が、相手を失うかもと思ったとたんに「君はぼくのものだ」「誰にも渡さない」とか言い出す身勝手さで、レイフ・ファインズがきれいな顔で見つめてくるから何となくほだされてしまうけれど、クリスティン・スコット・トーマス演じる人妻キャサリンが自立した大人の女性であるのに比べると、アルマシーはとても幼い。そんな風に思いながら観ていたのだけど、瀕死のキャサリンの元になんとしても戻ろうとする、必ず戻ると誓った約束を守ろうとするその必死さにはやはり胸を打たれて、息絶えたキャサリンに寄り添う姿には涙がこみ上げてしまった。官能的で甘美で哀しくて切ない映画。ふたつ隣の席に座っていた20代前半と思われる男性が人目も憚らず号泣していて、なんというかまっすぐでいいなあと思った。

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