劇団た組『ぽに』

11/3 KAAT神奈川芸術劇場大スタジオで劇団た組『ぽに』 作・演出:加藤拓也

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<公式HP掲載のあらすじ>

円佳(23歳 松本穂香)はやりたい事が見つからず、ひとまず海外に行く事を目標として、時給1000円でバイトシッターをしている。好きな人である誠也(24歳 藤原季節)の家に頻繁に寝泊まりしながら、生意気でシッターを奴隷扱いする男児・れん(5歳 平原テツ)の家から最近よく指名をもらっている。

ある日、いつもの様にバイトへ向かうが、業務中に起きた災害によって円佳はれんと避難せざるを得なくなる。しかし避難所は定員で入れず、2人は彷徨う事に。そんな最中、れんはいつも通り横暴で、限界に達した円佳はれんを置き去りにしてしまう。

円佳が誠也の家に帰宅した翌朝、れんは43歳の姿になって訪ねてくる。れんは「ぽに」になって訪ねてくる。

 

加藤拓也のインタビューによると、タッチされたひとが鬼になり、次にタッチされたひとがまた鬼になり、これをひたすら繰り返す鬼ごっこという遊びに、責任から逃げて他人のせいにする人間の姿が重なって生まれた作品とのことで、「ぽに」の発音は「鬼」と同じだ。とにかく出てくるのが、自分には落ち度はない、絶対に間違っていない、すべては相手が悪いという自己中心的な考え方のひとばかりで、吐く言葉たちがまた非常に生々しくてすごく不愉快になるのだけど、じゃあ自分に照らして思い当たる部分がないかというと決してそう言い切ることはできない。強弱はあれど保身に走りたい感情は誰しも持っていると思うから、登場人物たちの責任転嫁発言はまさに自分の嫌なところを拡大して突き付けられたように感じる。劇中で唯一、自分の職務を責任を持って全うしようとするのは目が不自由なコンビニの店長だけだ。そして「ぽに」とは一体何なのか、答えがはっきり示されることはなく、観客によって解釈は様々だと思うのだけど、「ぽに」の姿は「ぽに」が憑いたひとにしか見えず、憑かれたらお清めが必要で、お清めをしても90%の割合で失明するということ(この物語も視力を失った円佳の姿で終わる)、見えなくなって見えること(分かること)があるという捉え方はひとつあるように私は思った。コンビニ店長はおそらく過去のお清め経験者で、目が不自由になって以来、責任転嫁(鬼ごっこ)をやめた人なのだ。そして自分は何でも分かっている気になって安全だと思う場所から他者を執拗に攻撃する、昨今の風潮にも重なる怖さも感じる作品だと持った。去年観た「誰にも知られず死ぬ朝」もすごく良かったし、劇団た組は今後も観ていきたい。キャスト陣では去年に引き続き出演の平原テツの悪たれ5歳児ぶり、藤原季節のゲスの極みぶり、共にすばらしかったけれども、共感よりも反感を呼ぶようなどうしようもなく駄目な部分をたくさん抱えた主人公の円佳を演じた松本穂香が本当にとてもよかった。