NTLive『ハンサード』

1/27 シネ・リーブル池袋でナショナル・シアター・ライブ『ハンサード』 作:サイモン・ウッズ、演出:サイモン・ゴッドウィン

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 1988年、サッチャー政権下のイギリス。保守党議員であるロビン(アレックス・ジェニングス)と妻のダイアナ(リンゼイ・ダンカン)は、顔を合わせるなり辛辣な嫌味の応酬を始め、そのやり取りから長年の冷めた夫婦関係が透けてくる。政治状況を巡って二人の会話は激しく対立していくのだけれど、舞台上映が始まる前に1988年のイギリスで起きた出来事を紹介する映像が流れて観客の理解を助けてくれるし、物語の背景を踏まえて観ると、当時の政権に関するジョークの意味もなるほどと思える。ちなみに「ハンサード」とは英国議会の議事録を示す言葉なのだとか。と、途中までは風刺に満ちて笑いを誘う会話劇が後半、この夫婦がここまですれ違うことになった理由が明かされてムードががらりと変わる。互いに相手に隠してきた深い悔恨、取り返すことのできない過去。抱えてきた哀しみと痛みを分け合った二人は、この先も一緒に年を重ねていくのだろうと予感させて幕は下りる。それにしてもイギリスは巧い俳優しかいない国なのだろうか。出演のおふたりの演技、見応えがあった。

アレックス・ジェニングス