『フェードル』

1/20 シアターコクーンで『フェードル』 作:ジャン・ラシーヌ、演出:栗山民也

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去年の11月にBunkamura先行でチケットを購入して、ずっと楽しみにしていた公演だったのだけど、緊急事態宣言の再発令によって劇場収容率を半分に減らすために全席払い戻しに。あらためての再販売で前から2列目というとても良い席で観ることができた。フェードル(大竹しのぶ)が義理の息子イッポリット(林遣都)に激しい恋心を抱いたがために起こる悲劇。大竹しのぶのフェードルは、なりふり構わず狂乱するその様も凄まじいのだけど、イッポリットが敵方の娘であるアリシーを愛していることを知った瞬間の、一瞬で凍り付くその顔と沈黙からフェードルの怒気・妬心・殺意がないまぜになった感情が伝わってきて鳥肌が立った。しかしフェードルはただただ一人の男性を強く愛しただけであり、イッポリットへの想いを侍女(キムラ緑子)に話す場面などはまったく“恋する乙女”になっていて、ちょっとコミカルな本来の可愛さが感じられたりする。そして拒絶されても責められても抑えることができない激情にフェードル自身がもがき苦しんでいるのだ。その葛藤の先に待っていた哀しい結末。実は大竹しのぶの芝居を劇場で観たのは初めてだったのだけど、まさに圧巻、つくづくすごい俳優だと実感した。