午前十時の映画祭『蜘蛛巣城』

11/23 TOHOシネマズ日本橋で『蜘蛛巣城』4Kデジタルリマスター版

戦国時代。武将・鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千秋実)は謀反を鎮圧し、主君が待つ蜘蛛巣城へと馬を走らせていた。雷鳴轟く中、「蜘蛛手の森」で道に迷った二人は、不気味な妖婆(浪花千栄子)に出くわす。妖婆は、武時はやがて北の館の主に、そして蜘蛛巣城の城主になる、そして義明は一の砦の大将となり、やがて子が蜘蛛巣城の城主になると告げ、宙に消えた。二人は一笑に付したが、予言はその後、一つずつ現実のものになっていく―。

三船敏郎に本物の矢が次々と放たれるラストシーンはあまりにも有名だけど、この作品を映画館で観るのは初。シェイクスピアの「マクベス」の翻案であり、思っていた以上に原作に忠実な内容だったのだとあらためて知った。1957年公開、モノクロの映像に能の様式美を取り入れたという黒澤明の演出は、昨年末に観たジョエル・コーエン監督、デンゼル・ワシントン主演の「マクベス」にも非常に強い影響を与えていたことが分かる。霧の中から登場人物が浮き上がってくるシーンなどはオマージュと言えるほどだ。鷲津武時の妻(マクベス夫人にあたる)を演じた山田五十鈴が本当にすばらしく、その妖艶な美しさはもちろんのこと、狂気に落ちていく様の凄まじさに目を奪われる。今年の午前十時の映画祭ラインナップの中でとても楽しみにしていた作品。映画館で観られて大満足だった。